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漢方と西洋医学の得手不得手

漢方は西洋医学の補完医療」という言葉は、たびたび聞かれる言葉です。

私は、この言葉にややモヤるのです。
「旦那は家事や子育てを手伝え」というのと同様だと言えば、なんとなく分かるでしょうか。

なぜ漢方“だけ”が、西洋医学を“補完”するのか。
“補完”という表現をするのであれば、「漢方と西洋医学は相互補完できる」という方がいいと思っています。
漢方と西洋医学は、それぞれ異なるパラダイムの上で、人間・人体・病体を見ているのです。

なので、お互いの得手不得手をお互いが補えればいいですよね。
もちろん、どちらにも不得手という場合もあるかもしれませんが、それはおそらく他の医学でも難しいのだろうと思います。

例えば、西洋医学は癌やリウマチ、物理的な疾患は得意なのかなと勝手に思っています。
そして、これらはおそらく漢方はあまり得意ではありません。
逆に、西洋医学は、冷えやのぼせ、ほてり、気象病などは不得意なのかもしれません。
実はこれらは漢方の得意分野であったりします。

また、漢方の苦手な部分としては、西洋医学の検査値です。
具体的には、血圧であったり、血糖値であったり、尿酸値であったり、その他に肝臓や腎臓の数値などです。
漢方では、基本的には、患者本人の自覚症状や治療者の五感による客観情報から分析を行うため、自覚症状のない数値そのものを改善させることは、やや難しいのです。
当然ながら、現代医学で漢方薬を用いることで、これらの数値を改善させるデータもあるかもしれません。
しかし、漢方では本来、これらの数値を治療の目標とすることが歴史上ありませんでした。
検査値が西洋医学の検査法なので、当たり前のことですね。
西洋医学が漢方の陰虚を治せるのかというのと同じことです。

なので、決して健康診断数値を改善できないと言っているわけではないですが、その数値そのものを直接改善させるとすれば、それはどちらかというと不得手になるのです。

その代わりではないですが、先ほど書いた通り、冷えやのぼせ、ほてり、気象病など数値に現れにくい自覚症状については、漢方は得手と言えるでしょう。