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自然界と身体~天人合一~

漢方では、人体は自然界の影響を受けていると考えています。

自然界で起こる現象は、体内でも起こる。

これを“天人合一(てんじんごういつ)”と言います。

 

古代の医学は、自然界で観察できたことから応用してきたから、そう考えました。

自然界(大宇宙)には、「風・寒・暑・湿・燥・火」という6つの気があり、それぞれが盛衰することで季節が移ろっています。

これを六気(りっき)と言います。

この六気が、人間一人ひとりにどう感じるか。

 

例えば、寒が強まってくる冬の始まりを想像します。

ある人には、心地よいと感じるかもしれません。

しかし、またある人には寒いと感じることもあります。

これは、人間側の違いではありますが、寒いと感じる人は、それによりカゼを引いてしまうこともあります。

このように、人間に悪影響を与えてしまう気を邪気(六淫・りくいん)と言い、それぞれ「風邪・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・火邪」と名前が変化します。

  1. 風邪の特徴…自然界で風が吹くと物が移動したり、揺れたりします。 人体でもカゼのように、ゾクッとしたら、喉が痛くなり、熱が出て、頭痛がして…と次々に症状の変化が早かったりします。また、めまいやふらつき、震え・痙攣など揺れる症状があります。そして、皮膚病では患部が移動したりします。
  2. 寒邪の特徴…物体が冷えると、気体→液体→固体と硬く動かなくなっていきます。 人体でも冷えると、強いさむけや手足・腹部の冷えが起こったり、サラサラの鼻水、小便も近くなります。そして、硬く動かなくなるために、毛穴が締まり汗が止まって鳥肌が立ったり、筋肉が硬直して引きつることもあります。 身体を流れるエネルギーである気血の流れも悪くなり、停滞した場所に痛みが出たりします。
  3. 湿邪の特徴…雨の日や梅雨の時期は、何となくどんよりします。雨で濡れた服は重たいものです。 体内でも、湿気はベタベタ重たいです。頭が重い、身体が重だるい、手足がだるい・しびれる、鼻水や皮膚病の滲出液がベタベタするなどがあります。 また、胃腸は湿邪に弱いため、梅雨の時期や湿気の強い日本の夏では、食欲が落ちてしまいます。いわゆる夏バテです。
  4. 火邪の特徴…熱邪とも言います。 炎は燃え始めると、一気に炎上し、上空に煙を上らせます。 身体に熱があると、顔が赤くなったり、皮膚が赤くなったり、目が赤くなったりするだけでなく、高熱が出たり、のぼせたり、口内炎や皮膚病が噴き出したり、鼻血や血尿・血便・不正出血など出血が止まらないこともあります。 精神的にも、落ち着きがなくなり、怒りっぽくなったり、眠れなかったりします。 また、毛穴も開いてしまうため、汗が止まらず、体力を消耗してしまうこともあります。
  5. 燥邪の特徴…秋や乾燥した砂漠のイメージです。 身体の水分を乾かしてしまいます。皮膚や目・鼻・口が乾燥します。小便の量が減ったり、大便も乾燥して便秘になってしまいます。 外気と接する肺は乾燥に弱いため、肺が乾くと気管支喘息や空咳などが出やすくなります。
  6. 暑邪の特徴…文字通り夏のイメージです。 これは、熱邪と湿邪が合わさった感じです。

自然界の六気の変化に、身体がついていけないと、悪影響を及ぼすことになり、このようにさまざまなことが起こります。