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方剤ひろい読み~消風散~

消風散は皮膚病で多く使用される方剤。

当帰・生地黄(乾地黄)・防風・蝉退・知母・苦参・胡麻仁・荊芥・蒼朮・牛蒡子・石膏・甘草・木通の13味から構成されている。

 

中薬学では、

当帰:甘・辛・苦、温、心・肝・脾、補血調経・活血行気 止痛・潤腸通便

生地黄:甘・苦、寒、心・肝・腎、清熱滋陰・涼血止血・生津止渇

防風:辛・甘、微温、膀胱・甘・脾、散風解表・勝湿止痛・祛風止痙・散風止痒

蝉退:甘、寒、肺・肝、疏散風熱・利咽開音・透疹止痒・退翳明目・祛風解痙

知母:苦、寒、肺・胃・腎、清熱瀉火・清肺潤燥・滋陰退虚熱・生津止渇

苦参:苦、寒、心・脾・大腸・小腸・肝・腎、清熱燥湿・殺虫止痒

胡麻仁:甘、平、脾・肺・肝・腎、滋養肝腎・補益精血・潤燥滑腸

荊芥:辛、温、肺・肝、袪風解表・宣毒透疹・散瘀止血・祛風止痙

蒼朮:辛・苦、温、脾・胃、祛風除湿・燥湿健脾・散寒解表・除障明目

牛蒡子:辛・苦、寒、肺・胃、疏散風熱・利咽散結・祛痰止咳・宣肺透疹・解毒消腫

石膏:辛・甘、大寒、肺・胃、清気分実熱(清熱降火・除煩止渇)・清肺熱・清胃火・生肌斂瘡

甘草:甘、平、十二経、補中益気・潤肺祛痰 止咳・緩急止痛・清熱解毒・調和薬性

木通:苦、寒、心・肺・小腸・膀胱、降火利水・宣通血脈

 

荊芥・防風・牛蒡子・蝉退が袪風として働き、腠理の風邪を除く。 蒼朮・苦参・木通は燥湿・清熱として働き、湿熱邪を除く。 石膏・知母は清熱瀉火として働き、熱邪を除く。 生地黄(乾地黄)は涼血、当帰は活血、胡麻仁は養血として働き、血熱を除き、血を滋潤する。 総合して、湿疹・風疹(風湿熱毒)に使用し、疏風養血・清熱除湿するとされる。

【出典】

『外科正宗・雑瘡毒門・疥瘡論』(明・陳実功、1617年)

風湿 血脈に浸淫し、瘡疥を生じるに致り、掻痒 絶えざるを治し、及び大人 小児 風熱 隠疹にて、遍身 雲片斑点、乍ち有り乍ち無きも並びに効あり。

当帰 生地 防風 蝉脱 知母 苦参 胡麻 荊芥 蒼朮 牛蒡子 拙稿 甘草 木通

 

出典である『外科正宗』では、風湿または風熱による皮膚病で痒みが強く、白い斑点などが出たり消えたりするものに使用するとある。

 

【古典】

・中国

『済陰綱目・胎前門・中風』(明・武之望、1620年)

妊娠 頭旋目眩し、視る物 見えず、腮頬腫核するを治す。

防風 羌活 当帰 川芎 白芷 荊芥穂 甘菊花 羚羊角 大豆黄巻 石膏 甘草

 

『景岳全書・外科鈐古方』(明・張景岳、1624年)

風熱隠疹にて掻痒し、及び婦人の血風にて掻痒し、或は頭皮腫痒し、或は諸風 上攻し、頭目 昏眩し、項背 拘急し、鼻 清水を出で、噴嚔し声 重く、耳 蝉鳴を作すを治す。

 

『医宗必読・傷風』(明・李中梓、1637年)

四時 感冒にて、発熱し悪寒し、頭痛し声 重きを治す。

蒼朮 麻黄 荊芥 白芷 陳皮 甘草 (生姜 葱白)

 

『医方集解・袪風の剤』(清・汪昻、1682年)

風熱 上攻し、頭目 昏痛し、項背 拘急し、鼻嚔し声 重く、及び皮膚 頑なに麻れ、癮疹 掻痒し、婦人の血風を治す。

荊芥 陳皮 厚朴 甘草 防風 羌活 藿香 僵蚕 蝉退 川芎 茯苓 人参

 

『証治匯補・上竅門・口病章』(清・李中梓、1687年)

風を受け唇 動くを治す。

川芎 羌活 防風 茯苓 白僵蚕 藿香 荊芥 甘草 蝉退 厚朴 陳皮

 

『成方切用・袪風門』(清・呉儀洛、1761年)

風熱 上攻し、頭目 昏痛し、項背 拘急し、鼻嚔し声 重く、及び皮膚 頑なに麻れ、癮疹 掻痒し、婦人の血風を治す。

厚朴 陳皮 甘草 荊芥 防風 蝉退 藿香 僵蚕 川芎 茯苓 人参

 

・日本

『勿誤薬室方函』(浅田宗伯、1877年)

風湿血脈に浸淫し、致りて瘡疥を生じ掻痒絶えざるを治す。及び大人小児風熱癮疹身に遍く、雲片斑点たちまち有りたちまち無きに、并せて効あり。

当帰 地黄 防風 蝉退 知母 苦参 胡麻 荊芥 蒼朮 牛蒡 石膏 甘草 木通

『勿誤薬室方函口訣』(浅田宗伯、1879年)

此方は風湿血脈に浸淫して、瘡疥を発する者を治す。一婦人年三十ばかり、年々夏になれば惣身悪瘡を発し、肌膚木皮の如く痒塌、時に稀水淋漓忍ぶべからず、諸医手を束ねて癒えず。余此方を用ふること一月にして効あり。三月にして全く癒ゆ。

 

『漢方処方解説』(矢数道明、1966年)

《応用》内熱があって、分泌物強く、掻痒の甚だしい皮膚病に用いる。 すべて頑固な皮膚病・湿疹・蕁麻疹・水虫・あせも・皮膚掻痒症・夏期に悪化する皮膚病等に応用される。

《目標》頑固な湿疹で、分布津物が多く、痂皮を形成し、地肌が赤味を帯び、痒みが強く、口渇を訴えるのを目標とする。

 

出典の『外科正宗』以降、薬味が各書物で大きく異なるが、風熱・風湿による頑固な痒みを伴う皮膚病に使用されてきた方剤。