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カゼは汗をかいて治すべし

漢方と言って思い出す薬は?と聞くと、おそらく「葛根湯」と答える方が多いでしょう。

一般に、いわゆる「かぜ薬」の代表だと思います。

漢方は長く飲まないと効かないという都市伝説が蔓延しているのに、代表は急性病の薬という矛盾を抱かずにはいられませんが…汗

 

さて、そんな葛根湯をはじめとする漢方の「かぜ薬」ですが、どういう理屈で治すのか。

一言で言えば、冷えた外気(風寒邪)が体表面に侵入してきた時に、発汗によりそれを追い出すのです。

体表面付近に邪気があるために、さむけや発熱など体表面の症状があるわけです。

このような薬は、葛根湯以外にも、桂枝湯、麻黄湯、大青竜湯などがあります。

 

例えば、この4つの違いはざっくり言うと…

・桂枝湯:頭痛、発熱、少し発汗、軽いさむけ

・葛根湯:頭痛、発熱、汗が出ない、ゾクゾクさむけ、うなじ~背中のこわばり

・麻黄湯:頭痛、発熱、汗が出ない、ゾクゾクさむけ、節々痛い・筋肉痛、咳

・大青竜湯:頭痛、発熱、汗が出ない、強力なさむけ、身体痛い、うなされる

 

葛根湯が歴史上初めて書かれた書物は『傷寒論』という西暦200年頃のものですが、そこにはどのように服用すると一番効果的かがしっかり記載されているのです。

特に、その本の中で一番最初に登場する桂枝湯の部分で詳しく見ることができます。

 

(桂枝湯を)服用して少ししたら、熱々の薄い粥をすすって薬の力を助ける。しっかり布団をかぶって2時間ほどしたら、全身にしっとり汗をかいていることが良い。流れるほど汗をかかせてはいけない。それでは治らない。1回の服用でしっとり汗をかいて回復したなら、もう飲む必要は無い。汗をかいていないのなら、同様にして2回目を服用する。それでもまだ発汗しないなら、服用間隔を短くして服用する。半日で3回飲んでしまう。もし、症状が重い場合は、昼も夜も服用して、24時間観察する。1日分を服用し終わってもなお発汗がなく症状があれば、次を作って服用する。まだ、発汗がないなら、2~3日分までは服用する。生もの、冷たいもの、ネバネバしたもの、肉、麺類、刺激物、酒、乳製品、傷んだものは避ける。

 

発汗するまでどんどん飲みなさいと言っています。

桂枝湯以外は、発汗させる力が強いので、粥をすする必要はないと書いてあります。

しかし、ここで分かるように、粥をすすろうがすすらなかろうが、汗をかくことが大事なのです。

しばしば、葛根湯を水で服用する方がいますが、それだとまったく薬の効果が得られません。

しっかり温かくして服用し、服用したらすぐに布団に入ってください。

発汗するまでは2時間ごとに服用し、発汗したら着替えをしてゆっくり眠ってください。

目が覚めたときは身体が楽になっているはずですよ。

 

《参考》

『傷寒論』

12条 太陽中風、陽浮而陰弱。陽浮者、熱自発;陰弱者、汗自出。嗇嗇悪寒、淅淅悪風、翕翕発熱、鼻鳴干嘔者、桂枝湯主之。

桂枝湯方

右五味、㕮咀。以水七升、微火煮取三升、去滓、適寒温、服一升。服已須臾、歠熱稀粥一升余、以助薬力、温覆令一時許、遍身漐漐、微似有汗者益佳、不可令如水流漓、病必不除。若一服汗出病差、停後服、不必尽剤;若不汗、更服依前法;又不汗、後服小促其間。半日許、令三服尽;若病重者、一日一夜服、周時観之。服一剤尽、病証猶在者、更作服;若汗不出者、乃服至二三剤。禁生冷・粘滑・肉麺・五辛・酒酪・臭悪等物。

 

31条 太陽病、項背強𠘨𠘨、無汗、悪風、葛根湯主之。

葛根湯方

右七味㕮咀、以水一斗、先煮麻黄葛根、減二升、去沫、内諸葯、煮取三升、去滓、温服一升、复取微似汗、不須啜粥、余如桂枝法、将息及禁忌。

 

35条 太陽病、頭痛発熱、身疼、腰痛、骨節疼痛、悪風、無汗而喘者、麻黄湯主之。

麻黄湯方

右四味、以水九升、先煮麻黄、減二升、去上沫、内諸葯、煮取二升半、去滓、温服八合、复取微似汗、不須啜粥、余如桂枝法将息。

 

38条 太陽中風、脈浮緊、発熱悪寒、身疼痛、不汗出而煩躁者、大青竜湯主之。若脈微弱、汗出悪風者、不可服。服之則厥逆、筋惕肉瞤、此為逆也。

大青竜湯方

右七味、以水九升、先煮麻黄、減二升、去上沫、内諸葯、煮取三升、去滓、温服一升、取微似汗、汗出多者、温粉撲之。一服汗者、停后服。汗多亡陽、遂虚、悪風煩燥、不得眠也。